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イチゴアイスの中に入っている小さな苺のつぶ、海辺で手のひらに残った砂つぶ、乾いた地面に落ちた最初の雨つぶ…小さいことだけど、ちょっと人生が楽しくなったり豊かになる。そんなつぶつぶを探しに行こう。

2013年11月14日木曜日

「放射線」を知る旅 4日目

以下の記事は、放射線非専門家の一般人の日記です。不適切な発言、間違っている箇所があるかもしれません。というか、間違っているところだらけかもしれません。なのでもし、あればご指摘いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


4日目 疑問をぶつける

霧箱実験をしてから、なあんだ、地球上の放射線が「ゼロ」になることなんてないんだなあ、と奇妙な納得をしておりました。ゼロだったことがなくても、私が生まれて今こうして横柄な態度をとっていられるんだもんね!ははん!心配ないよね!と思っていました。
ところが、実験を一緒にやったお友達がこう言うのです。

「やっぱり、まだ、もやもやしてんねん」

つまり、気になるのは、自然放射線の数値がうんぬんじゃないわけです。福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた地域がどういうことになっているのか、やっぱりよく分からないというのです。どう判断したらよいのか。安全なのか安全じゃないのか。自分だったらどうするのか。
ふむ。確かに。依然としてその問題について言われるとまったく分からない・・・。2年半以上経っているのにね。
今更聞けないよね・・・コソコソ。
と、いうわけで、二人でコソコソお勉強会してみようかということになりました。いや、お勉強会だなんて、ただの疑問の提出会です。しかも専門家なしで!?おい、大丈夫か、私たち!?


1)「福島第一原子力発電所の事故」という名の・・・
葉山にある小さなカフェに開店時間と同時に居座り、持ってきた本をテーブルにドンと載せて、コーヒーを飲みながら、原子力発電所ってさ、というところから始まっていきました。
理科ハウスで聞いた、池内了先生のエネルギー問題の話が役立ちました。夢のエネルギーと言われてたよね、でも廃棄物の管理を子孫に押し付けるんだよね、などなど。
と同時に、二年前の節電の話も出ました。停電になって工場が止まってうちの旦那はちょっと仕事が減ったよ、あれは怖かったなあ、電力が供給できなかったら都内でも失業者が増えるんじゃないのかな、旦那が失業したらどうしよう、とか。
「だからさ、原子力発電は地球規模ではよろしくないエネルギー源だけど、すぐに全部なくなったらそれはそれで問題だから、ゆっくりなくしていくというのが現実的なのかな?」
「うーん、どうなんだろう。」

(しばし無言)

さらに、相方は、福島県の伊達市にお住まいの方々と交流があり、その方々から聞いたお話もしてくれました。爆発が起きた瞬間の体験が本当に恐怖だったこと。その後の家族別々の生活、離婚、失業。子供が外で遊ばない生活などなど。

(しばし無言)

「なんかさあ、福島第一原子力発電所の事故は、放射性物質による汚染をもたらした原因だから、放射性物質を取り除きましょう!原発反対!とかそういう話じゃ収まらないね?」
「うん、たぶん」
なんだか「ゲンパツジコ」という言葉は、様々な社会問題を内包し、「ゲルマン民族大移動」「天保の飢饉」「オイルショック」のような時代の状況や変化を表す名詞になっているんじゃないかな、という気がしてきました。様々な社会問題を見ずしてこの事故を語ってはいけないような気がしてきました。

(しばし無言)

しかし、黙っていても先には進まないじゃござんせん?
気を取り直してコーヒーごくごく。
「あのさ、外で遊ばないって、除染が必要な地域だからだよね?どのくらいの数値になったら除染するのかなあ?」
「なんか、3.8とか20とか?聞いたことあるんだけど」
「なにそれ?どういう数値?」
「よくわかんない(汗)」
「・・・そうだね、そこから調べてみようか。」
調べることにしました。大丈夫か!?私たち!?うーん、前途多難!


2)三つの数値
本の中にも、ネットでも、「この数値になったら除染します値」、そんな風に書いていないわけで、一体どの数値がそれなのかよく分からない(汗)。かろうじてなんとなくわかったのは、

①マスコミで見かける追加線量。どうやら帰る帰らないでみんなが基準にしている数値、1msv/y 
②本で見た自然放射線の年間平均線量、2.4msv/y(世界平均)、1.5msv/(日本平均)
③環境省で除染を行う基準にしているらしい数値、0.23μsv/h
で、①と②が③に大いに関係しているということでした。

(なによ、この数値の定義)子供達よすまん。母さん達も受験勉強をくぐり抜けてきたのにこの有様であるよ。トホホ。しかもその後の会話ったら。ああ、皆さん本当にごめんなさい。

「ねえ、単位がわからない」
「1msv=1000μsvだって」
「なるほど」
「①はICRPが一般公衆に向けて勧告している値みたい。」
「放射線関係に従事している人の数値はもっと高いのかな」
「①は自然放射線じゃない放射線の数値で、②は自然の放射線の数値ってことかな?」
「自然放射線じゃないって、なによ」
「飛行機に乗った時と事故で出た放射性物質からでるものかな」
「医療用放射線は含まれない?」
「どうだろ?」
「①+②=3.6msv/y だね。1年間でそれだけ浴びてもまあOKってこと?」
「うーん。そういう計算していいのかな。」
「ラムサールって場所は、②だけで10msv/y じゃん」
「???」
「①と②はパー・イヤーで、③はパー・アワーだけどさ、単純に足して、÷365÷24なのかい?」
「3600÷365÷24・・・0.41なんですけど・・・。違うじゃん!」
「えー、じゃあどうやって一時間あたりの数値を決めてるわけ?」
「一日のうち、屋外に8時間、木造家屋内に16時間いた場合と書いてあるよ」
「屋外に8時間か。私そんなに外にいないかも(笑)」
「とにかく何か計算するわけだ」
「うん」
「とにかく、この0.23μsv/h は、①と②を時間に変えたのを足したってことか」
「う、うん」
「じゃあさ、空間線量が0.23μsv/h でも、それが全部事故由来じゃないってことでしょ?」
「えっと」
「・・・今日はこれくらいに、しとくか」

ああ。私たちダメかも~。
資料が読めてないじゃん!全然だめじゃん!

3)「まあ、いろいろ」
ここまで2時間。よく話しました。とっても疲れたので、ご褒美には、おいしいランチをいただきました。スープが頭とお腹にしみました。
帰りに、カフェの店長さんに「そんなに何を話してたんですか?」と言われました。
「まあ、いろいろ」
二人共そう言いました。
子供の自慢話じゃない、旦那の悪口でもない、学校への文句でも、ママ友の噂話でもない。原子力発電所について、そして除染をする基準値について話していたんですよ、ってちょっと言えなかったな。
こんなに大事なことなのに、2年8ヶ月、何やってたんだろね。それに、何のために中学や高校、大学に行ったんだろね。資料もきちんと読めないなんてさ。
そんな恥ずかしい気持ちと、たくさんたくさん出てきた疑問を宿題にして、とりあえず第1回のお勉強会は終わったのでした。
めげずにまたやろう。そして、いつか、専門の方を呼んでみたいなー。
(おわり)